奇貨居くべし

20130412 久しぶりに、「血沸き肉躍る」本に出会いました。宮城谷昌光氏の「奇貨居くべし」です。秦の宰相で、始皇帝の実父とも言われる「呂不韋」の物語です。商人の庶子として生まれながら、天下統一間近の秦の宰相にまで上り詰めていく過程が生き生きと描かれています。その中で、荀子や孟嘗君などの有名人との交流も彩りを添えています。今回の驚きは、紀元前の時代にありながら、呂不韋の思想が民主主義に基づいているといることでした。確かに、呂不韋の編した、「呂氏春秋」には「天下は一人の天下に非ず。天下の天下なり。」との言があります。始皇帝の頃の秦というと、行き過ぎた法治国家として、暗さを感じざるをえないのですが、呂不韋からは、まったく逆の印象を受けました。物語の主人公としては好感を持って読み進めましたが、始皇帝との血縁の謎がいまいちスッキリしませんでした。宮城谷氏の作品はたくさん読んでいますが、出世作の「重耳」とならんだ傑作だったと思います。

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くちびるに歌を

 GWの読書感想文です。合唱関連の小説が話題(本屋大賞エントリ)になっていますから、読まないわけにはい20120505きません。これから読む人もいると思うので、あらすじは追いかけない事にしておきます。総論としては、楽しく読めましたが、スッキリしないところも結構ありました。Nコンに出るあたりは、突っ込みどころがあるのはしょうがないのですが、全体として、文章が練りきれていないのではないかなという読み難さを感じました。ここは、編集者がチェック入れたり、プロの読み手である本屋さんの評価が高いことが不思議です。ちなみに、先日の「もしドラ」でも感じたことなんですけどね。それから、最も基本的なテーマですが、小説オリジナルではなく、アンジェラ・アキの「手紙」をモチーフにしていますし、「くちびるに歌を」というタイトルはツェーザー・フライシュレンの詩(山本有三訳など)からのものですね。(信長さんの同名の合唱曲も近年流行です)正直、自分としては、全てが独創的なものを、芸術家に求めてしまいます。(まあ、オマージュという概念もありますし、このタイトルだから手に取ったのは事実ですけどね)
 それでも、合唱っていいなぁと思うことが出来る作品ですし、中高生にお薦めしてもよいものではありました。

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「ローマ人の物語」完結

20111018 2005年から読み始めた塩野七生「ローマ人の物語」がやっと完結しました。全43巻+ガイドブック、6年かかりました。(というか文庫本の出版が7年かかっていたんですけど。)しかし、どっぷりこの世界にはまった6年間でした。神話のロムロス・ハンニバル戦記・カエサル・大帝コンスタンチヌスなど本当に飽きませんでした。この本を通じて、直接的には古代ローマというものの見方が180度変わりました。また、塩野氏の歴史感が心地良くて、だいぶ影響されてしまったかもしれません。塩野氏の歴史感に影響されたとはいえ、歴史から学ぶことは改めて多いと思った本でした。

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世界征服は可能か

20080816
 実は、世界征服を企んでいます。なーんて事はなくて、オタク作家として(最近はダイエット本で)有名な岡田斗司夫氏の「世界征服は可能か」という新書を読んでみました。自分の小学校時代は「仮面ライダー」いや「ショッカー」とともにあったといっても良い世代ですが、「ショッカー」は何故「世界征服を企む悪の組織」である必要があったのでしょうか?本郷猛を改造する科学力と資金があれば、そのままでも十分贅沢に暮らせるんだけど。「ショッカー」だけでなく、ヤッターマンのドクロベエ・バビル2世のヨミ等さまざまな悪の組織を俎上に議論をしていきます。また、運良く世界征服をしてしまったっら、その後の統治や後継者も考えなければなりません。そんな事を、そこそこ真面目に、そこそこバカバカしく展開していて楽しく読めます。
 (ちなみに、歴代の悪役の中で、地球を滅ぼして移住しようとしている、宇宙戦艦大和の「ガミラス」だけは、目的が正しいと思われます。)
 ただ、現実世界に戻って考えている部分が、ちょっと説教臭くて重たくなります。独裁の隣国は、独裁者自身は輸入によって贅沢をしているようですが、人民は疲弊しています。彼が全世界を征服してしまったら、全てが疲弊してしまって、結局彼も貧乏になってしまいます。また、現在世界をしている感のあるアメリカは忙しいです。今日も、あの女性長官はグルジアに行って戦争の調停をしています。支配者になったら世界中全ての紛争の調停をしなければならなくなります。
 まあ、そんなこんなですが、支配者タイプテストをやってみたら、自分は独裁者タイプでした。この例は、バビル2世のヨミ、現実世界のヒットラーが該当します。そう彼らは、全てを自分でやろうとして過労死するタイプです。ということで、過労死はイヤなので、世界征服は止めておきます。

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ルネッサンスとは何であったか

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 塩野七生氏のイタリアものシリーズの最新(といっても4月刊)文庫版を読んでみた。基本的に塩野信者なので、継続して読んでいる「ローマ人の物語」と同様に、一気にのめり込んで読んでしまった。
 ルネッサンスとは「見たい、知りたい、わかりたいという欲求の爆発」という考えを基に、フィレンツェ・ローマ・ヴェネツィアの都市をめぐり、ダヴィンチ等のルネッサンスの巨人たちの魅力を対話形式でわかりやすく説いている。驚いたのが、ルネッサンスの先頭はダンテやボッカチオと学生時代に習った記憶があるが、本書ではなんと「アッシジの聖フランチェスコ」に置いていること。聖フランチェスコというと、合唱人としては「プーランク」の男声合唱や「高田三郎」の聖歌が思い出され清貧の聖者という認識だったが、中世キリスト教の改革を始めた人でもあったのです。
 ルネッサンスの入門書として、また長大な塩野作品を読み始める前に読んでも良い作品だとも思う。

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三国志男

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 少し前に買ってあったのだけど、演奏会が終わるまで封印してあったのを解いて一気に読みました。(その辺に置いておくと現実逃避ですぐ読みたくなってしまうので。。)
 内容は、中国語も全く話せない自称ひきこもりの青年が、三国志の遺跡をたどって5ヶ月あまり中国を放浪するエッセイ。とにかく、三国志ファンのツボを突いてバカバカしくて面白い。でも中国旅行の本質はついている感じ。度胸のない自分でもこういう旅行がしてみたいと思わせる本でした。「王平の墓」ってキャッチに魅入られるのは自分だけ??
 ちなみに、著者の「さくら剛」氏は浜松の出身らしい。このほかには、「インドなんて二度と行くかボケ!!・・・でもまた行きたいかも」なんて本も出してます。

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ローマ人の物語

 昨年末から読み始めた、シリーズが一段落したので感想を書いてみる。
 塩野七生著のこの作品は、ローマ建国のロムロスから書き始めて、共和制、帝政にいたるまでのローマ通史で、既に単行本として出版されているものの文庫化の今回は第2シリーズにあたり、カエサル(シーザー)からオクタビアヌス(アウグストス)までの時代を書いた、8-16巻にあたる。
 とにかく、カエサルの生き方がおもしろい。読書感想文として、この面白さを伝える文章力が自分にないのが悔しい。著者の塩野七生氏の書き方は、淡々と歴史を著述しているだけで、たとえば司馬遼太郎にみられるように読者が主人公と一体となって読み進めるようなワクワク感はないのだが、カエサル自身の生き方や事件が面白いからか、また、氏のカエサルへの偏愛が原因なののか、6巻飽きることなく読むことができた。また、カエサルからオクタビアヌスへ移行する途中にでてくるポンペイウス、アントニウス、クレオパトラといった敗者への評価が冷静で共感できる。しかし、オクタビアヌスの治世になると、一気に読み難くなる。まだ、アントニウスを破るところくらいまではよいが、それ以降になると、平時の安定を目指すころになると、安定志向の主人公の気質もあるのだろうが、事実が淡々と進むだけで血沸き肉踊る感がない。
 共和制と帝政を現在の我々が比較すると、民主制が絶対正しいように思い、この時代のローマは暗黒の時代へ進んでいるように思っていたが、支配領域が広がり直接民主制がとても実現できないような状況にあり、政治の効率性を考えれば、この時代においては帝政も是とすべき政体であるように考えが変わった。
 さて、このローマ史は16巻にいたってまだ半分、完結するのは数年先かもしれないが、読みつづけたい。

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